HOME 映像 随感録 活動予定 告知板 著書 掲載記録 技と術理 交遊録 リンク集 お問合せ Twitter メルマガ English

'01 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

'00 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

'99 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2000年5月3日(水)

このところ、いくつか気づきがあり動きそのものに進展はあるが、その術理を言葉にするとほとんどすべて以前言ったことばかりである。ただ同じ言葉でも気づきの深度が違うということなのだろう。

たとえば今日も買物で大型店のなかを歩いていて、曲がる時、軸足を支点に゛ぐるっ゛と体をまわさないで、井桁術理に沿って中間重心で膝をぬいてすっと変ることを意識して行うと、以前では気づかなかった運動の多層構造さがみえてきて、ただ歩くだけで十分に興味深かった。

あと最近驚いたことは1日の深夜、少しだけ打剣をした時に骨格主体で体を動かすということに、いままでにない実感があった。
うねり構造からの脱却のためには骨格主体の動きは不可欠だと思っていたが、ほんの少しだけ手がかりが得られた気がした。
しかし、その感覚はあまりに微妙でちょっと言葉にならない。ただ、そのせいか眠りは浅く、翌朝は首のまわりはコチコチに凝るし、体がどうしようかと思うほど不調で参った。ひとつには道場と私の部屋の大掛かりな片付けのせいもあるのかもしれないが、予想外の自分の体の状態にやや呆然とする。

しかし、歩き方、曲り方、ターンなど、少し細かに研究して、先月24日から始めている朝日カルチャーセンターでの連続講座ではじっくりと解説して、受講されている方々に実習していただこうと思っている。

なにしろ、このところ呼吸のことが気になって、ずっとその方に眼がいっていたが、いくら呼吸の工夫をしても基礎となる体の動きが捻れまくっていては何にもならないことをこの頃あらためて感じるからである。
吸気の工夫については私以外にも数人動きに取り入れている者が出はじめているが、一度胸のスク感じを実感すると、もはや以前のような呼気主体には戻れなくなるようだ。
ただ吸気の動作の工夫は、なるべく自然な形で吸気がその動きに必然性を伴う技(たとえば逆手抜飛刀打など尻餅をつくような形で後ろに下がりつつ抜刀してその太刀を飛ばすもの)などから工夫をはじめ、胸のスク感じを得てからはそれを呼気で実現できるようにすべきであろう。

何日か前、たまたま上京された宇城先生からお電話をいただき小1時間お話をさせていただいたが、その時も宇城先生に「吸う息でやるのは身体をこわさないですか。まあ甲野先生なら大丈夫でしょうが」と御心配いただいたが、吸気の工夫を考えられている方に念を押すが、無理矢理吸気で動くことはくれぐれも慎んでいただきたい。

以上1日分/掲載日 平成12年5月6日(土)


2000年5月7日(日)

私の稽古会の特色は、私の技が変れば、それに応ずるように周囲の会員諸氏の技も変ってくるところにあるように思う。
特に道場の常連諸氏は、その地に棲む動物が、その土地の気候風土に適応するように動きが変ってきて、私の技を封じようとする。そのため今週は通用した技も1〜2週間後はどうなっているか分からない。

たとえば常連会員最古参の吉田健三氏はここ2週間ほど前から、それまではまったく自分には縁がないということで試みてみることさえなかった打突系の動きに目覚め、今日なども結構向き合っていろいろ試みたが、私もいままで一度も体験したことのない実に奇妙かつ有効な動きで、ひとしお感じ入った。
全体の動きの雰囲気は、まさに吉田氏の人柄そのものを表しているようななんともいえぬコミカルなところがあり、思わず笑ってしまいそうなところがあるが、実際に手を交えてみると、時にまるで特殊処理した映像を見るような、とても人間とは思えぬところがあり、じつに妙である。誰にも習わずこんな動きを生み出してくるのだから、まったくたいしたものである。

これに対して私の方は5日に恵比寿の稽古会で気づいた、手はフワリと相手にくっついて背中を一気に落すことで手も沈めるという動きがあったから、私の方がなんとか出来た感じはあったが、最近私が多用している吸気で胸を空かせつつ相手の手にくっつくことで相手の攻撃を封ずるという方法が、体に浮きをかけ、その上、体の差し換えと一足立ちを見事に使いこなしている吉田氏には容易に効かず、まあ当然といえば当然なのだが、術理に沿った動きの有効性をあらためて実感した。

また昨日稽古に来たT氏は、私が展開中の吸気が性に合っているらしく、ますますそれに沿って動きに進展がみられたが、吸気の副作用か、稽古の後、体が異常に疲れるとの感想をもらしていた。
ただ疲れはしても、呼気では味わえぬこの吸気の自在さを知ってしまった以上、それを突き抜けていく以外ないと決心しているらしい。
これからも様々なことがあるだろうが、会員諸氏の研究の向上と健康を心から祈りたい。

以上1日分/掲載日 平成12年5月9日(火)


このページの上へ戻る