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2000年1月10日(月)

 暮れから正月にかけては、道場の片付けで何日も使った。
とにかく加速度的に増え続ける資料・書類で道場の3分の1が使えなくなりかけていたので、武道雑誌などは最低必要なページを残し、あとは思いきって資源ゴミの回収へ出すことにした。
ひどく骨が折れたが、積むと肩の高さほどになる量を整理し、ようやく今日あたりから片付く目処がたってきた。
しかし、そうなるとつい、たまりにたまっている執筆などをしてしまいそうになる。そして、現にこうして書いている。

今日は岡山の中学校で陸上競技の指導をされている小森君美先生が来館。暮れから正月にかけての術理の展開を解説・実演する。
技は腹力の活用の展開例をいくつか行なう。これは先月から気づいて、具体的に研究してきたものである。ただ、暮れの28日、岡安鋼材に依頼しておいた15sの大きな羊羹状の鉄材が届いてから、これを正座して大腿部の上に置き、そこから数p持ち上げながら下腹に緊張をつくり、腹力を養いはじめて、私自身も自覚できるほど変ってきた。
まず、切込入身や肩どりの斬落しが重くなったりしてきたが、一番ハッキリと以前(1ヶ月ほど前)と違ってきたのは、こちらの片手を相手にシッカリと両手で、こちらがやりにくいように持たせた状態から相手を崩す゛浪之上゛。
11月中旬頃は゛大円の原理゛で゛浪之上゛もそれ以前よりは出来るようになっていたが、まったく静止した状態から屈強な相手に充分な体勢(たとえば、前からガッチリ肩を入れて持つ)で頑張られたり、動かそうとする起りに合せていなしをかけられたりすると、まだやりにくいことが多かった。そのため、相手が持とうとした時に僅かだが動き始めるなどして流れを作り、こちらの動きが相手に分断されないようにしていた。
それが下腹に緊張が集まるようにして、体がうねらず、同時に使うように工夫したところ、年が明けたあたりからか、相手に好きなように持たせてから動き始めても出来るようになってきた。
これは腹力を使うということで体のうねりがとれてきて、身体各部の動きが同時に出発出来るようになり、そのため事前の気配が消えてきたためだと思う。その結果、゛大円の原理゛にも共通する大きな円の動きが自然と生じているようにも思う。
それにしてもいわゆる筋力トレーニングは、必要無いというより、弊害の方が多いのではないかと思う。なにしろ筋肉を太くするというのは、そこに過大な負担をかけるわけで、いってみれば下手な体の使い方をすることになるからである。
下手な体の使い方をして筋肉を太くし、それができたら上手に体を使え、などということはどう考えても無理があるように思う。

以上1日分/掲載日 平成12年1月12日(水)

2000年1月20日(木)

1月18日、19日と仙台の稽古会に出向く。
最近の技は専ら腹力の応用。片手あるいは両手持たせの沈み込み(いなしあり)や、切込入身が重くなったことについては一様に驚かれたから、確かに昨年の暮れよりは重さが増しているのだと思う。
この重さを出すことについては昨年暮れに15sの鉄材を購入して腹力養成に使っていたが、どうももっと重い方がいい気がして、思いきって25s以上を岡安鋼材に注文。それほどの重さのものなら鍛冶仕事の金床にも転用できるようにと、炭素工具鋼のSk鋼を使うことにし、入手しやすかったSK4番を送ってもらった。それが15日に届いたのだが26sとのこと。これは手応えがある。
正坐して太腿の上にこれを載せ、完全に持ち上がらなくとも下腹がグッと、自分自身で納得のいく緊張が得られればそれでいいとしている。
臍下丹田というのは一種象徴的なもので「何もそこに力が入ったり、緊張させるものではない」という意見もあるようだが、私としては目下、具体的手がかりとしてこの下腹の緊張は得がたいものであり、当分の間はいまのまま技の工夫を行なっていきたいと思っている。

とにかく下腹の緊張、腹力の活用によって、支点を作って動くことの問題、うねることの問題がいっそう明らかになってきたことは確か。
腹部という骨のない場所の緊張は、腰などの実際に骨があって物理的支点となり易い場所の緊張と違い、ある動きをするのに作用、反作用で突っ張るのではなく、もっと違った働きがあるようだ。
しかし、グッと「腹にうまく来たな」と思った後、いっぺんにウエストが5p以上も大きくなるのは下腹に息が入った、ということなのだろうが、近代的身体観(外観)からいえば二の足を踏む人が多いだろうな、とつい苦笑してしまう。

以上1日分/掲載日 平成12年1月22日(土)

2000年1月25日(火)

今日、郵便局に用事があって出た帰路、道場のすぐ前にある、かなりきつめの勾配の坂を自転車で登ったところ、驚くほど楽に登れた。
自転車はいちおう変速機はついているが、もう10年くらい乗っているかなり古いものであり、何度この坂を登ったか、とても数えきれない。いつも最後まで登りきるにはかなりの頑張りが必要であった。
とにかくこんなに楽々と登れたことは記憶にない。
考えられる理由はただひとつ、鉄塊を正坐状態から持ち上げている腹力鍛練の恩恵だろう。
正中心力を唱道された、かの肥田春充翁は、1日わずか20回、時間にして1分もかからない正中心鍛練で、時に山仕事をしても、そうしたことを専門にやっている人達の何倍かの働きをしたというが、実際に脚力を鍛えたわけでもないのに(それどころか、このところ家にこもって原稿を書いていることが多い)自転車での登坂がこんなに楽になるとは、やはり腹力鍛練というのは驚くような効果があるものだ。
今はとにかく様々な動きと腹力が結びつくルートをつくることを何よりも考えて稽古をしようと思っている。
お陰で、粘っこく崩れにくい相手は技とルートの研究になり、技が相手に通用しない状況こそますます研究が深まることを実感できるようになった。

以上1日分/掲載日 平成12年1月29日(土)

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