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今日は岡山の中学校で陸上競技の指導をされている小森君美先生が来館。暮れから正月にかけての術理の展開を解説・実演する。
技は腹力の活用の展開例をいくつか行なう。これは先月から気づいて、具体的に研究してきたものである。ただ、暮れの28日、岡安鋼材に依頼しておいた15sの大きな羊羹状の鉄材が届いてから、これを正座して大腿部の上に置き、そこから数p持ち上げながら下腹に緊張をつくり、腹力を養いはじめて、私自身も自覚できるほど変ってきた。
まず、切込入身や肩どりの斬落しが重くなったりしてきたが、一番ハッキリと以前(1ヶ月ほど前)と違ってきたのは、こちらの片手を相手にシッカリと両手で、こちらがやりにくいように持たせた状態から相手を崩す゛浪之上゛。
11月中旬頃は゛大円の原理゛で゛浪之上゛もそれ以前よりは出来るようになっていたが、まったく静止した状態から屈強な相手に充分な体勢(たとえば、前からガッチリ肩を入れて持つ)で頑張られたり、動かそうとする起りに合せていなしをかけられたりすると、まだやりにくいことが多かった。そのため、相手が持とうとした時に僅かだが動き始めるなどして流れを作り、こちらの動きが相手に分断されないようにしていた。
それが下腹に緊張が集まるようにして、体がうねらず、同時に使うように工夫したところ、年が明けたあたりからか、相手に好きなように持たせてから動き始めても出来るようになってきた。
これは腹力を使うということで体のうねりがとれてきて、身体各部の動きが同時に出発出来るようになり、そのため事前の気配が消えてきたためだと思う。その結果、゛大円の原理゛にも共通する大きな円の動きが自然と生じているようにも思う。
それにしてもいわゆる筋力トレーニングは、必要無いというより、弊害の方が多いのではないかと思う。なにしろ筋肉を太くするというのは、そこに過大な負担をかけるわけで、いってみれば下手な体の使い方をすることになるからである。
下手な体の使い方をして筋肉を太くし、それができたら上手に体を使え、などということはどう考えても無理があるように思う。
とにかく下腹の緊張、腹力の活用によって、支点を作って動くことの問題、うねることの問題がいっそう明らかになってきたことは確か。
腹部という骨のない場所の緊張は、腰などの実際に骨があって物理的支点となり易い場所の緊張と違い、ある動きをするのに作用、反作用で突っ張るのではなく、もっと違った働きがあるようだ。
しかし、グッと「腹にうまく来たな」と思った後、いっぺんにウエストが5p以上も大きくなるのは下腹に息が入った、ということなのだろうが、近代的身体観(外観)からいえば二の足を踏む人が多いだろうな、とつい苦笑してしまう。