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とうとう私が生まれた年と同じ、己丑の年が明け、今年も多くの方々から年賀状を頂きました。あらためて御厚情に深く御礼申し上げます。
この年末、そして正月は、私が小学生の頃、年賀状というものを書き始めて以来、母の喪中を除き一度も体験した事がない、唯の一枚の年賀状も書かないという初めての正月となりました。一昨年までは、「ああ、せめて何人かの方には出したいな」という思いがありましたが、暮れは、そういう事を思う暇もない状態で、年が明けてからは、ひたすら片付けに従事しています。
というのも、昨年は限界を超えた多忙さで、重要な用件すら何件も落ちてゆく状態に、とにかく場を整えねばと、片付けを始めたからです。しかし、片付け始めたものの、昨年の部屋の改築で手つかずのまま、とにかく適当に詰め込んでおいた戸棚や引き出しの整理から始めてみると、十年から二十年そのままになっていたものなどが少なからずあり、とにかく片付ければ片付けるほど片付けるものが増えてくる現実に呆れつつも、とにかく片付け続けていたからです。
しかし、片付けているうちに、「ここでよくある整理法などを参考にせず、私自身の性癖が納得するようにしてゆくことが精神衛生上も最もいいのだ」と気づき、例えば短いヒモの切れ端も収納しておく引き出しなども作り、それぞれの品に帰るべき家を持たせるようにしたところ、片付ける張り合いが出てきました。しかし、そういう事をやっていると、当然の事ながら膨大な時間がかかってしまいます。
しかし、なんとか現在の時期しかチャンスはないので、何とか頑張ろうとしているうち正月も三日となってしまいました。現在の時期しかないというのは、常に列車が通っている線路のような日常となっている今の私にとって、列車が通らない夜間のような、つまりさまざまな依頼が来ない暮れと正月しか、腰を据えて片付けが出来ないのです。
ただ、例年は年賀状の返事などに少なからぬ時間を割いていましたが、今年は初めてそれも止めて片付けをやっているというわけです。本当に人として世間にお世話になりながら、義理を欠いた事ですが、とにかくそこまでしないと、とても今年は仕事がまわっていきそうにありませんので(もっとも、ここまでやってもまわりかねると思いますが)、御容赦頂きたくお願い致します。
このような状況だが、稽古を全くしていないわけではない。暮れに庭の木々の枝降ろしをY氏と一緒にやって、木登りがどれほど身体づくりに役立つかあらためて考えたし、今日は二時間ほど、三十五年来の武友、伊藤峯夫氏が数ヶ月ぶりに来られたので、昨年秋以来の技と術理の気付きのまとめをして、またいくつか気付く点があった。
原稿も書きたいし稽古もしたい。しかし今はとにかく片付けをしよう!と言いつつも、年越しでやらなければならない校正もあった。またあらためて書くが、こうした雑誌等の取材は、2007年7月6日付けの随感録の状態から少しも改善されていないのは辛いところだ。今年からはこの点も何とかしたい。
以上1日分/掲載日 平成21年1月4日(日)
5日に綾瀬であった東京武道館での講習会から、今年の私の活動がスタートした。そして今日は1年以上ぶりになる朝日カルチャーセンター湘南での講座。5日に綾瀬であった講習会は、今までになく人数が少なかったので、現在の世界的な景気の冷え込みで私の講座も人数が減ってきたと思ったのだが、今日の湘南はコの字型の三面では収容しきれないほど満杯の人達で驚いた。
講座が終ってもなお20人以上の熱心な人達に囲まれて、いろいろな質問や体験希望が相次いだので、そこから着替えるまで30分くらいはたちまち経ってしまった。ただ、お陰でJの字を引っくり返したようなというか、その「Jの字のカーブがどんどん直線へと変化してゆく"追い越し禁止"」という、いままでの私の技のなかでも最も複雑な術理が、私のなかでかなり進展があったから、きっと私も相当に熱が入って技を試みていたのだと思う。
さて、明日8日は中央公論の取材があって、その後は朝日カルチャーセンター新宿で名越康文・名越クリニック院長との公開トーク。公開トークなので技の話はあまりしないと思うが、ここも既に満杯との事。寒いなか来て下さる方々には御礼を申し上げたい。
私の技に関しては、既に申し上げましたように、最近は説明が大変しづらいのですが、それでもその技の進展に御関心のある方は、9日の池袋コミュニティカレッジ、18日の大阪での講習会の方はまだ余裕があるようですので、どうぞ。11日の千代田区での講習会は、ほぼ満員だと思いますが、御関心のある方はお問い合わせ下さい。
以上1日分/掲載日 平成21年1月8日(木)
正月が明けて、もうすぐ半月あまりになるというのに、いまだ1枚の年賀状も返していないし、メールも本当に必要なもの以外はほとんど返していない。年賀状や年賀メールを頂いた方々には、この場を借りて御礼を申し上げると共に、不義理をあらためてお詫びしたい。
とにかく先週は、5日に綾瀬での稽古を皮切りに、今年の仕事も始まったと思ったら様々な用件で連絡が入る上、出かける日が相次ぎ、正月に細かく片付けかけて、ようやく片付け癖がつきかけたのがフイになりそうで残念この上ない。しかし、8日の朝日カルチャーセンター新宿での公開トークで炸裂した名越節は凄かった。ただ、それに続いて9日、10日と必要な連絡さえ中々取れないほど用件がつまってきて、とても片付けを続けるどころではなかった。しかし、ここで忙しさに流されず、何とか踏みとどまって次々に降ってくる用件のなかでも片付けを続行してゆきたいものだ。ただ、このような中でも、技のというか、術理の気づきがいろいろとあり、その方も何とか整理したいし、本当に身を割かれるような日が続いている。
ごく最近の術理の気づきで最も理解されにくいと思われるのは、体全体をうまく協調して使おうと思ってはならないという事だろうか。これは確か10日に気づき、昨日11日、千代田での講習会の折、あらためて実感した事である。ただ、この説明しにくい術理も、説き方によっては納得してもらえない事もないような気がする。どういう事かというと、簡単に言えば、体はもともと体全体が協調的に働こうとしているのに、そこを意識で何とかしようとする事は、却って体全体の自然な働きを乱すという事だからである。つまり、今までにも言ってきた事を少し違った切り口から説いているとも言えるからである。
まあ、会社で皆で協力してやろうとしている時に、そうした事を理解しないバカ社長が「皆で協力してやれよ」と言うと、皆のやる気がなくなってしまうようなものとも言えるだろう。『願立剣術物語』でも、第1段目に「また留まるまじきと思うも、それに心留まるなり」とある。したがって、その「全身を協調しなくては」という意識を外すために"ズラす"という事がひとつの方便として有効に思えるのである。
そんな事をいろいろと考えていた今日は、名古屋からわざわざ私に会うために、学校法人Y学園柔道部のK監督が来館。明大の柔道部在籍時代、日本を代表する選手と数多く稽古され、膝と肩をひどく傷められて選手としての道を断念されたというが、柔道への情熱は変わらず、指導者として後進を育てながら御自身もよく学生と稽古されているらしい。
同行のK氏はK監督とは旧知の間柄で、私の技をよく理解されていて、いつか是非K監督を私に紹介したいという事だったので、私の技に対して見当外れな感想を言われたり、気まずい事にはならないだろうという予想はしていたが、実際にいろいろと動きを体験して頂いたところ、予想を超えた理解と評価を頂き、私の方が驚いてしまった。とにかく極めて率直に「これは我々柔道家が見逃していた未知の世界というか"間"で、大変勉強になりました」と、この武術の世界について、これからもっと詳しく知りたいという様子だった。
暮れに長崎で行なった剣道関係の方々の講習会といい、今日のK監督どの出会いといい、どうも今までは距離のあった剣道界や柔道界との関係が変わり始めてきたような気もする。
以上1日分/掲載日 平成21年1月14日(水)
2泊3日の関西方面への旅行を終えて、昨夜遅くに帰宅。今回は、まず16日は京大のO先生宅に泊めて頂き、科学的観方について、さまざまな角度からお話を伺い、また私もいろいろと話をさせて頂いた。17日は琵琶湖の畔でスポーツドクター対象の勉強会の講師として実技と講演。打ち上げも終って、この日いろいろと手伝ってもらった高橋佳三氏にホテルまで送ってもらい、ついでに少々研究稽古。ここで切込入身にいままでにない気づきがあった。その気づきが錯覚でなかった事は、翌日の大阪での講習会でも確かめられた。出来れば大阪に泊まって帰りたかったが、やることが山積しているので、20時過ぎの"のぞみ"で新大阪を発ち、家に着いた時、日付はすでに19日になっていた。
帰宅すると校正その他、用件が何十件と待ち構えていた。その中でも大きなものは『剣の精神誌』の文庫化のゲラ。明日、打ち合わせのため筑摩書房に行く予定だが、大量の増補のため旧版のなかでカットせざるを得ない部分も出てきている。しかし、資料的価値は旧版とは桁違いに上がった筈である。
とにかく最近は同時進行でいろいろな事が起こるので、何かここ2,3日の間に印象に残ったことがあったのだが、それが何だったか急には出てこなくなった。と、ここまで前ふりを書いていたら、さすがに思い出した。それは卓球で平野早矢香選手が今年も全日本の女王になった事。5日ほど前、確か2004年に平野選手に私の体の使い方を伝えようと、四国の講習会に当時まだ無名の平野選手を伴って受講された淡路島の山田俊輔先生から連絡があり、それによると「今年の平野は絶不調で、今度ばかりは勝ち残れないかもしれません」との事だった。が、さすがに本番となって、あの桁違いの根性に火がついたのか、粘りに粘って最後には優勝を飾ったようである。ただ平野さんのこと、「こんな事ではダメだ!」と、きっと思っている事だろう。一度機会があったらゆっくり話をしたいと思う。
しかし、とにかく次から次へとテレビのチャンネルを切り換えているように、電話やメールで色々な用件が入ってきて、その対応に追われているうち、気づけば窓の外は暗くなりかけていた。そうしたなか、資料を探していてフト見つけてはならないものを見つけてしまった。それは10年ほど前、まだ私に今にくらべれば時間があった頃、つれづれに書き始めていた時代小説の原稿である。つい拾い読みをしているうちに、忽ち30分くらいが飛んでしまい慌ててまたファイルに戻す。それにしてもとても自分が書いたとは思えないほどに書けていて、この続きが書ける日が来るとは今はとても思えないが、これをこのままにしておくのも心残りな気がした。まあ、もうあまりこの事を考えない事にしておこう。(これ以上ジャンルを拡げたら、本当にもうどうにもならなくなる)
しかし、ますます用件は増えるなかで、いったい私が今後どういう日々を過ごしてゆくのか、我が事ながら他人事のように興味を持ってしまう自分がこの頃いる。多分そうでもしないと、もう日々の仕事をまわす気力が続かないのかも知れない。
以上1日分/掲載日 平成21年1月20日(火)
今月後半は少し余裕が出て、書こうと思っていた原稿や片づけが出来ると思っていたが、20日に筑摩書房に、今春文庫化して刊行予定になっている大幅な増補改訂版の『剣の精神誌』の初校ゲラを取りに行って、初校戻しのあまりの日数の無さに「これはエライことになった」と思った。
というのも、私が自分で書いた部分を見直すだけなら、忙しいといっても、どこでも読めるが、数多くの参考文献を引用しているので、その確認を行ないながらとなると大変な作業になるからである。しかも、これだけに集中出来ればとにかく、他にも用件は山積している。例えば今日などは1日中家にいたが、様々な用件や来客があり、夜の10時頃やっとこの本の校正に取り掛かろうかと思ったら、16日泊めていただいていろいろとお話しを伺った、京大のO先生から電話。私の動きに触発されたという新しい気づきについての解説を伺って、私も今日気づいた事などを、お話ししているうち、たちまち1時間経過。このような状態だから、『剣の精神誌』の校正は、まあとにかくやるだけやって間に合わなければ仕方がない。
なんといっても物事にはどうにも換えられない優先順位があるからである。
その優先順位の高い、技に関して、私がごく最近気づいた事(今日の気付きもいままでの私のなかでは小さくはない)など、御関心のある方は、24日の朝日カルチャーセンター横浜、あるいは29日のNHK文化センター青山 で実演と解説をしますのでどうぞ。
以上1日分/掲載日 平成21年1月23日(金)
以前は電車に乗っている時くらいは原稿書きに集中出来たが、最近は予定を確認したり、旅に持って行くものをメモしたりと、他の用件にも時間を割く割合が増え、どこに行くにも車中を長く感じることがない。東京−京都間などは本当に「えっ、もう京都か」と思うほど、それなら呑気に「こだま」で行けば良さそうだが、家でやる仕事が、また出発ギリギリまであるからそうもいかない。
それに、この正月の片づけで、凝り性の自分を封じると片づける気力がなくなるから、凝り性は肯定することにしたので一層やることが増えた。昔のどこの国だったかの童話に、パンを作ろうとして粉がいる、粉のために小麦がいる、小麦つくるのに種がいる…と段々大掛かりになっていく話があったが、これが笑えない状態の今の私である。
それに目下『剣の精神誌』の校正という大宿題を抱えているから、もちろん稽古もままならない。とにかく、この2日間ほど手伝いの人も雇ってひたすら1日10時間以上取り組んでいるが、古い伝書の引用が相当量あるので、その手間のかかる事は一通りではない。これは、まず底本となる新曜社版の引用が確かかどうかを事前に調べておく、といった下準備、段取りが必要だった。今回の事で編集のありようを改めて考えさせられた。
しかし、そうやって稽古への情熱を圧縮していると、毎日セッセと稽古するのとは別の展開がありそうだ。29日はNHK文化センター青山、2月1日は京都、5日は朝日カルチャーセンター大阪。そうした講座の中でも変化があるかもしれない。御縁のある方はお出かけ下さい。また、介護に関しては、来月15日長野で、いまや介護に関しては私よりずっと詳しい岡田慎一郎氏の講座があるようです。介護法に関心のある方はどうぞ。
以上1日分/掲載日 平成21年1月28日(水)